皆さんは漢方についてどのような印象をお持ちでしょうか。ご参考になるかどうかわかりませんが、私の経験をお話してみたいと思います。私が医師になって数年間は、都市部の救急指定病院に勤務していたこともあって、「漢方薬は本当に効き目があるのだろうか。」と懐疑的な目で見ていました。当時私は内視鏡を使用した出血性潰瘍や静脈瘤に対する止血術やポリペクトミー(ポリープ切除)、超音波診断装置を使用した肝臓癌へのエタノール注入療法などに従事していました。最新の診断装置を使用し、身体の内部を細部にわたって調べ、血液生化学検査

によってさまざまのデータを検証することが、診断・治療の常識だと確信していたのです。
もちろんその考え方は間違ってはいないと思います。
現在の私も当院で検査ができるものは検査を行い、できないもの、
例えばCTやMRIなどは近隣の地域の中核病院に紹介した上で検査をして頂いています。

ところが、それだけでは解決しない問題がありました。当時の私自身に激しい片頭痛発作が起きたのです。病棟回診をして入院患者様への指示を書くのがやっとで、体を動かせばズキンとよりいっそう痛みが増悪しました。あまりの痛みに「頭の中がどうかなっているのではないだろうか。」と不安になり、不安と痛みをこらえて頭部CTの検査を受けました。結果は「特に異常なし。」でした。

今でこそ片頭痛専用治療薬がありますが、当時はまだ実用化されておらず、私は手当たり次第に鎮痛薬を服用しました。まったく効果が無く、最後に吐き気までしてきました。ほとんど動けない状態となり自分で自分が悲しくなりました。

「頭部CT検査で異常なし。」という検査結果は、当時の私の頭痛に対しては、なんら解決の術を与えてくれなかったのです。そのとき診ていただいた先輩の先生から、「これを飲んでごらん。」とある漢方薬を処方していただき服用してみました。すると30分くらいで、あれほど私を苦しめた頭痛が、「すーっと」和らいでいくのを感じました。服用三回目ほどで、あれほど私を苦しめた頭痛が感じられなくなりました。十数年前の出来事です。

私はそれ以来、診断・治療に必要な検査はまず出来るだけきちんと行い、その上で、“特に異常は無い”ながらも「本人にとって苦痛な症状」であるならば、漢方でうまく症状を和らげることが出来ないだろうかと考えるようになりました。

「苦しんでいる人」にとって「異常ありません。」といわれるほど悲しいことはありません。